映画『ファーザー』のあらすじと真実をネタバレ解説!誰もが直面する老いを美しく切り取った映画

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引用元:https://cinerack.jp/thefather/

映画『ファーザー』は認知症の父を主人公とした2021年公開の映画です。主演のアンソニー・ホプキンスがアカデミー賞主演男優賞を受賞して話題となりました。正直私としては見ようかどうしようか迷っていたのですが……結論から言うと、本当に見てよかった!まさかこんなになく映画だとは……。

この記事では、映画『ファーザー』のあらすじや見どころをネタバレありで解説していきます。

映画『ファーザー』の作品情報・あらすじ【ネタバレなし】

映画『ファーザー』作品情報

【日本公開】2021年

【原題】The Father

【原作・監督・脚本】フロリアン・ゼレール

【共同脚本】クリストファー・ハンプトン

【賞歴】アカデミー賞6部門ノミネート、主演男優賞、脚色賞受賞

映画『ファーザー』のあらすじ【ネタバレなし】

名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。アン役に「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマン。原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり、「危険な関係」の脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネート。ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞した。

https://eiga.com/movie/94427/

映画『ファーザー』登場人物と出演キャストを解説

アンソニー/アンソニー・ホプキンス

https://eiga.com/news/20210426/11/

認知症を患った80歳の男性。しかし本人にまったく自覚はありません。昔から「癖の強い」性格のようで、娘が雇った介護士も罵ったり暴力的な態度を示したりして解雇してしまいます。面倒を見てくれるアンよりも下の娘であるルーシーを気に入っており、折に触れてルーシーのことを話します。

演じるのは、『羊たちの沈黙』でレクター博士を演じたアンソニー・ホプキンス。今作で2度めのアカデミー主演男優賞を受賞しました。現在83歳。これまでの俳優人生で培ってきた演技力を遺憾なく発揮しています。

アン/オリヴィア・コールマン

https://natalie.mu/eiga/news/414358

主人公アンソニーの娘。アンソニーを介護士ますが、反発する彼の介護に徐々に疲れを募らせていきます。

演じたのは、オリヴィア・コールマン。『女王陛下のお気に入り』で主演を演じ、ヴェネツィア国際映画祭 女優賞[8]、ロサンゼルス映画批評家協会賞 主演女優賞、アカデミー主演女優賞を受賞した演技派女優です。アンソニー・ホプキンスも彼女を絶賛しています。

ポール/ルーファス・シーウェル

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アンの夫だと思われる人物。

演じたのは、ルーファス・シーウェル。『ホリデイ』や『ツーリスト』に出演しており、舞台俳優としても有名です。

ローラ/イモージェン・プーツ

https://www.cinemacafe.net/article/2021/05/11/72759.html

アンソニーお気に入りの介護士。キュートな笑顔が印象的でした。

演じたのは、イモージェン・プーツ。『ビバリウム』や『スウィート・ヘル』に出演し、注目を集めています。

男性/マーク・ゲイティス

https://eiga.com/person/283196/

アンソニーの前に現れた謎の男性。

演じたのは、マーク・ゲイティス。『SHERLOCK』や『ドクター・フー』で俳優・脚本家として活動しています。

女性/オリヴィア・ウィリアムズ

https://www.allcinema.net/person/85968

アンソニー前に現れた謎の女性。

演じたのは、オリヴィア・ウィリアムズ。『X-MEN: ファイナル ディシジョン』『ゴーストライター』に出演しています。

映画『ファーザー』のあらすじを解説【ネタバレあり】

映画『ファーザー』のあらすじ【起】

ロンドンで一人暮らしをするアンソニーのもとに娘であるアンが尋ねてきます。アンが雇った介護士を罵ってやめさせたアンソニーを心配しての来訪でした。アンソニーは介護士は自分の腕時計を盗んだと言います。その後、腕時計はすぐに見つかりますが、「盗まれる前に隠しておいた」とアンソニーは悪びれる様子はありません。

そんなアンソニーに、アンは恋人とパリへ引っ越すと告げます。アンソニーは、アンはジェームズと結婚していると思っていましたが、5年も前に離婚しているとアンは言います。

https://qetic.jp/film/father-210413/394080/

ある日、アンソニーが紅茶を入れようとしていると、居間から物音がします。侵入者ではないかと疑い、フォークでこっそり武装しながら居間へと向かったアンソニーの目の前には、男が悠々と新聞を広げくつろいでいます。

お前は誰だと問うと、アンの夫のポールだと男は言います。さらに彼は、アンとは結婚して10年になり、ここは自分の家だとも言います。アンソニーは混乱しますがポールがアンを呼び戻すことで、安心します。しかしアンソニーの目の前に現れた女性は、アンではない見知らぬ女性です。

しかもアンは5年前に離婚したといい、夫はいないと言います。アンソニーは混乱して部屋に入っていきました。

映画『ファーザー』のあらすじ【承】

認知症が進むアンソニーを心配したアンは、新たな介護士ローラを雇います。アンソニーはローラを一目見るなり気に入り、上機嫌にお酒を進め、タップダンスを披露します。そしてローラのことを娘のルーシーに似ていると言い、彼女は素晴らしい画家で居間は世界を旅していて長いこと会っていないといいます。

陽気なアンソニーに笑顔を浮かべるローラでしたが、突如アンソニーはそんな彼女を侮辱します。さらにアンのことも「自分を家から追い出そうとしている。だが俺は娘より長く生きて娘の葬式に出てやる。俺の家は渡さない!」と言います。

夜、疲れ切ったアンは、思わず父の首を締めるところを想像してしまいます。そんなアンにポールから「どうだったか?」と聞き、アンは「自分のことがわからなかった」とショックを受けた様子で言います。

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アンはアンソニーを医者に連れていきます。アンソニーは家かと思いますが、扉を開くとクリニックで少し混乱します。医者から様子を尋ねられると、自分はぜんぜん大丈夫だと告げアンがパリに行くことを告げます。アンはパリに行かないと否定します。

映画『ファーザー』のあらすじ【転】

朝、目を覚ましたアンソニーが居間へ行くと介護士のローラがいます。アンは仕事に出ており、自分が変わりにアンソニーの世話をすると言って薬を飲ませようとします。アンソニーはローラが本当に下の娘のルーシーに似ていると言います。しかし、ローラはなぜか「本当にお気の毒でした……」と悲しげに言います。その意味がわからないアンソニーに、ローラはさらに困惑した表情を見せますが、すぐに取り直し、公園に一緒に行こうと誘います。

https://www.cinemacafe.net/article/2021/05/14/72804.html

「アンソニーを施設に入れよう」夜、アンとポールがアンソニーを施設に入れることについて、揉めています。そこへアンソニーがやってきました。慌てたアンは、食事にすると言って準備を始めます。二人きりになると、ポールはアンソニーに「アンソニーが介護士を解雇したおかげでイタリア旅行をキャンセルしなければならなかった。一時期的に家に引き取るつもりがいつまでもここにいる」と腹を立てた様子で言います。

その後、アンが戻ってきてポールの怒りは一時的に収まりますが、再び一触即発の空気に。そんななかでもアンソニーはチキンのおかわりをしに自分でキッチンに向かいます。戻ってくると、居間ではアンとポールが揉めている声が聞こえてきます。

「アンソニーを施設に入れよう」先程聞こえてきたのと同じ声、同じ状況にアンソニーは混乱して部屋に戻ります。

別の日、アンソニーが居間へ行くとポールがいました。アンソニーは自分の時計がないことから、ポールが自分の時計を盗ったのではないかと推測しているようで、執拗にポールに時計のことを尋ねます。アンソニーに、ポールは言います。「いつまで我々を苛立たせる気なんですか?」

わけがわからないアンソニーにポールは、とうとう暴力をふるいます。アンソニーは泣き出し、アンが慌てて助けに来ました。アンは暴力の現場は見ていませんが、泣いて助けを乞うアンソニーを優しくなだめました。

映画『ファーザー』のあらすじ【結】

夜、アンソニーはどこからか、聞こえてくる声にドアを開けると、そこは病院の廊下。それでも声を頼りに歩きだします。すると、手術室のドアから傷だらけの女性が横たわっているのが見えます。アンソニーはそれがルーシーであることに気づきます。

その後、目を覚ますと見知らぬ部屋にいます。介護人らしき女性が入ってきました。それはかつてアンではない、家にいた女性です。アンソニーは混乱し取り乱します。女性は、

  • アンがパリに行ったこと
  • 数ヶ月前からアンソニーは施設にいること
  • アンは週末に見舞いに来てくれていること
  • 介護人の男性はビルであること

を説明してくれます。アンソニーは最初は穏やかに聞いていますが、自分の母親の話をし始め、やがて「自分の中の枝葉が一枚一枚なくなっていく」と取り乱します。女性は優しくアンソニーをなだめ、一緒に散歩に行って、木の葉を眺めようと言います。

映画『ファーザー』あらすじの真実を解説

映画『ファーザー』では、認知症のアンソニーの視点で物語が進むため、真実の境目が分かりづらいです。そのためここでは、『ファーザー』の断片から考えられる真実を推測してみたいと思います。

  • アンとポールは休暇をとってイタリア旅行に行こうとしていたが、アンソニーのせいでキャンセルになった
  • アンソニーは一時的にアンの家に来たが、自分の家だと思いこんでいる
  • ルーシーはずっと昔に事故で亡くなっている
  • 数ヶ月前からアンソニーは施設に入っている
  • アンとポールは現在はパリに住んでいる

時系列としては、

1:アンとポールは休暇をとってイタリア旅行に行こうとしていたが、アンソニーが介護人ともめてキャンセルになった。

2:アンはアンソニーを心配して、一時的に家に住まわせた。しかしアンソニーはアンの家を自分の家だと思いこんでしまう

3:認知症がひどくなっていくアンソニーを心配してアンはローラを雇う

4:ローラでも手に負えなくなってしまった(またはポールとパリに行く)ため、アンはアンソニーを施設に入れることにした

が妥当と言えそうです。

映画『ファーザー』のみどころ

腕時計とマイフラット

主人公のアンソニーは、最初のシーンで自分の腕時計を探し、介護人が盗ったのだと主張し続けます。その後も事あるごとに、腕時計を探しています。そして最終的にはポールが盗んだと疑い始めます。これはアンソニーの認知症の兆候を示すだけでなく、アンソニーが時間に固執していることも暗示している気がします。

また「マイフラット」と言う言葉も腕時計と同じように、事あるごとにでてきます。自分の家だと思いこんでいたのに、実際はアンの家だったというのは何とも切ない話ですね。

壊れたCD

アンソニーは冒頭から音楽をよく聞いています。キッチンで流すのはもちろん、自分の部屋でヘッドフォンで聞くのもお気に入りです。しかし途中、CDに傷ができてしまったのか、音楽は不自然に止まってしまいます。これもアンソニー自身のことを表している用に感じますね。

映画『ファーザー』の感想/まさかこんなに泣かされるとは

この映画はとても静かな映画です。爆弾がドッカンドッカン爆発したり銃をバンバンしたりすることもなく、認知症の主人公の生活を、彼の視点から描き出しています。

それなのに、とてつもない没入感。主人公のアンソニーと一緒に混乱し、真実がつかめたようなつかめないような、不安な気持ちになってしまいます。もちろん見ている我々は認知症ではないため、断片をつなぎ合わせて「ああ、こういうことか……」とわかっていくのですが、アンソニーはそうではない。最終的に、混乱を極め泣き出してしまう。そして見ているこっちも一緒に泣いてしまう。

消えていく記憶と少しずつ自分を失う恐怖、娘アンの父を思う気持ち、素直になれないアンソニー、それに苛立つポール、すべての登場人物の気持ちがよくわかってしまったから余計に辛かった。

親や自分自身がこれから歩んでいかなければならない、誰しもが避けては通れない「老い」というテーマを残酷に、けれど美しく描き出していました。

正直、U-NEXTのポイント消費のために見たので、予約するときは「どうしようかな~」なんて気持ちがあったのですが、そんな私をハリセンで叩きたい。いや、実際には見たから褒めるべきか。ヨシヨシ。本当に見てよかったと思える作品でした。

しかし見た後に「とても明るい気持ち」にはなれないので、メンタルが弱っていたり介護に関してマイナスの印象がある方にはあまりおすすめできないかも。でも映画としてはとてもよかった。よかった、本当に。

なによりアンソニーホプキンスが本当に素晴らしかった。彼は「自分の父親を演じた」とインタビューで述べていたけれど、これまでの長い俳優人生で培ってきた経験と、自分自身の体験があったからできた演技だったのだろうと感じました。

映画『ファーザー』が好きな方におすすめ作品

最後に、『ファーザー』を気に入った方におすすめの他の作品をご紹介します。

まずはこの1冊。ルシアベルリンの書籍です。生前は無名だったものの、死後10年以上経ってから世界中で訳されるほどの人気となりました。ルシアベルリンは生前シングルマザーで4人の子どもを抱え、アルコール依存症に苦しむという、波乱万丈の人生を送っています。

本書は、そんな彼女の短編集をまとめたもの。そのなかでも私がお気に入りなのは、施設に入った父を娘の視点で描いた作品。若い頃はいい人だった父も、年をとってとてもいやな老人になってしまう。娘は反対に今の父を好きだと思う、そんな作品です。

おすすめしている理由は言えないので、とりあえず読んでみてください(おい)

タイトルのファーザーつながり。映画もありますが、小説のほうがおすすめです。

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