吉村芳生展がすごかった「これ、鉛筆で書いてます」

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吉村芳生は、鉛筆画で知られる日本の画家です。先日、横浜のそごう美術館にて開催されている「吉村芳生展」に行ってきました。ホキ美術館の影響で写実美術に強く興味があったので、鉛筆でリアルな絵を描き出すのに興味がありました。実際に見てみてると、想像以上にすごかったのでまとめてみました。

吉村芳生とは

引用元:http://www.dpiy.co.jp/

吉村芳生とは、1950年生まれの山口家出身の画家で、鉛筆で描き出す緻密な絵が特徴です。美術学校で版画を学び、版画とドローイングの作家として27歳のときにデビューしました。しかし57歳のときに森美術館の「六本木クロッシング:未来への脈動」への出展作で注目されるまで、注目を浴びることはありませんでした。それでも長年自分の信じるものをコツコツと描き続けていました。

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初期の作品は、町中の光景や靴、ジーパンなど日常の風景を切り取った独自の手法で明暗を表現した作品が多いです。1985年に移住した山口県徳地では、豊かな自然や花々を主とした作品を多く描いています。花の絵はどちらかと言うと、生計を立てるための販売用として描くことが多かったようです。

脚光を浴びたのは晩年のことで、今後の活躍が期待されていましたが、2013年に63歳で惜しまれつつこの世を去りました。

みどころ

「機械文明に奪われたものを取り返す」途方も無い緻密な作業

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1977年の「金網」は、ケント紙と金網をプレス機にかけて紙に残った痕を描きあげるという手法で、全長は17メートル。一日5時間の作業を70日間かけて描き上げたものです。何とも途方も無い作業ですが、吉村芳生は、「機械文明が人間から奪ってしまった感覚を再び自らの手に取り戻す作業」と語っています。

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1983年の「ジーンズ」では、本物のジーンズを撮影し、拡大し2.5ミリ四方のマス目を引き明暗を1~9まで分け、一つ一つに振り分けていきます。

0→斜線1本
1→斜線2本
2→斜線3本……

というように、それぞれの数字に応じて斜線を引くというルールで制作されました。実際にジーンズの完成品とは別に、各マスに数字が書かれたものも展示されていましたが、その緻密さは一言では説明しきれません。

近くで見るとマス目を認識できます。昔のテレビや写真を極限まで拡大するとマス目が認識できるのと同じように一つ一つは斜線で形成されていますが、遠目から見ればまったくわかりません。そしてテレビや写真は機械ですが、この作品は当然すべて人力です。すごすぎる。。。

膨大な量の自画像。あらゆる角度から自分を見つめ続ける姿勢

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吉村芳生のライフワークとも言えるのが自画像。初期の頃から多くの自画像を手掛けていました。1985年当時は、モノクロで描くことが多かった吉村芳生ですが、インドのニューデリーに行ったことで心境の変化があったのか、カラーでの自画像を多数手がけています。

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2007年頃からは新聞紙の上に描く自画像を描いており、自画像だけでなく、新聞の内容もそのまま写し取るこれまた途方も無い緻密な作品となっています。新聞紙の自画像は上記の新聞紙と自画像を描き出すものと、既存の新聞紙に自画像のみを描く2つの種類があり、2009年には、1月2日の休刊日以外すべての日にちの新聞紙に自画像を描きました。

その表情は新聞の内容に大きく影響されており、特に野球に関するニュースが掲載されているときには、毎回嬉しそうな顔をしているのが印象的でした。野球好きなのかな?

吉村芳生と2011年3月11日

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2011年3月11日におきた東日本大震災は、吉村芳生に大きな影響を与えました。地震から1ヶ月間は、何も書けなかったものの、このまま何も書かなければ後悔すると感じ、新聞を取り寄せ3月12日の新聞から自画像を描き始めます。

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そして2013年に発表した「無数の輝く生命に捧ぐ」では、藤の花一つ一つを命としてとらえ、描き出しました。この作品のもととなった写真には、金網や背景が写り込んでおり、写真だけ見ると「普通」の写真でした。藤の花だけをクローズアップすることで、より花の美しさを際立たせています。

引用元:https://blog.goo.ne.jp/

また印象的だったのは、作品の右端部分にあえて余白を残していること。初期の作品では、風景や物体をよりリアルに描き出すことに注力していましたが、2000年以降は作品に意味をもたせることが多くなったそうです。

「吉村芳生展」横浜そごう美術館で開催中

「吉村芳生展」は、横浜のそごう美術館で10月24日~12月6日まで開催しています。お近くの人は足を運んでみてはいかがでしょうか。

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