10分でわかる『影響力の武器』の要約・まとめ|活用方法と惑わされない方法

影響力の武器

『影響力の武器』は、社会心理学者ロバート・B・チャルディー二 によって執筆された全世界でベストセラーとなっているビジネス書です。

だれしも一度は、「そこまで欲しくないけど買わされてしまった」という経験をしたことがあるのではないでしょうか。本書『影響力の武器』では、保険営業、インターネットビジネス、ディーラーなど、承諾誘導のプロたちが使っている「相手に買わせる」テクニックを紹介しています。

この記事では、『影響力の武器』を簡単に理解できるように要約していきます。「いい本だと聞いているけど分厚くてなかなか読む気が起きない……」という方はこの記事を読んでみてください!

人間の反応は自動的

七面鳥はヒナの鳴き声が聞こえると、ヒナの世話を始めます。反対にヒナの鳴き声がしなければ、ヒナの世話を全くしようとしません。七面鳥の親鳥は、ヒナの鳴き声をスイッチにして、自動的に世話を行うよう進化してきたのです。

同じようなことが人間にもあります。人間の脳みそは多くの情報を処理する必要がありますが、すべての情報をしっかりと処理していると、脳が追いつかなくなってしまいます。そのため、多くの情報はエネルギーを消費せずに処理する「自動反応」によって行動するように進化してきました。

そう、先程の雛の鳴き声をきっかけに世話を行う七面鳥と同じように、人間も特定の状況・条件下では特定の行動を取るようにできています。

人を動かす6つのアプローチとは?

この自動反応には大きく6つのアプローチがあります。

返報性「もらったら返さずにはいられない」

1つ目が返報性の法則。これは人間の自動反応の中でも、もっとも強い心理と言われています。そのため現代ではあらゆる場面でこの返報性の法則が使われています。

  • スーパーの試食コーナー
  • シャンプーに付いている新商品の無料試供品

この性質が有効な理由は人間は社会性を持ち、他人と協力することで進化してきた生き物だからです。そのため誰かに何かをしてもらうと、恩義を感じ、「自分も何かを返さなければ」と感じるのです。

そのため、別に買う気もないウインナーをうっかり試食してしまったがために買ってしまったり、以前買ったシャンプーについていた試供品の新商品に目が行き、買ってしまったりといったことにつながります。

返報性の法則の活用方法「断らせて譲歩する」

返報性の法則を「商品やサービスを売りたい」と感じている場合はどのように活用すればよいのでしょうか。確かに試食品や試供品は効果的だとわかりますが、今現在多くの商品やサービスで提供されているため、消費者に通じないのかと感じるかもしれません。

そういった際に有効なのが、「一旦相手に断らせて譲歩したものを提案する」という方法。これは、Aの商品を売りたい場合に先にあえてそれよりも高いBという商品を進めてからAを提示するという方法です。

惑わされないためのポイント

反対に消費者として、自分に必要がないものは買いたくない場合、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

返報性の法則は、人間が社会を発展させることに寄与してきましたが、この法則を悪用すると対等ではないサービスのやり取りにつながってしまいます。そのため消費者である私たちは、商品やサービスをもらったら自動で反応するのではなく、一度立ち止まってゆっくり考える必要があります。

「これは本当に必要?」「なぜこの人はこれをくれたのだろうか」「断ると気まずいという感情が生まれていないだろうか。もし生まれているとしても断ったところで私は何も悪くない」

ビジネスにおいて無料ほど高いものはないと考えるべきでしょう。

コミットメントと一貫性「人は一度決断したコミットメントに沿った行動をする」

人には、一度決断しコミットメントした内容を正当化するための行動を取るようになる性質があります。そのため、一度他者に対して宣言したことを遂行する行動を取ろうとします。

例えば、「ボランティアを受けたいですか?」というアンケートに「はい」と答えた人は、実際にボランティアに参加する確率が高くなったそうです。

なぜこのような性質があるかと言うと、一貫した言動・行動をしている人物が評価される傾向があるからです。そのため、一度自分が決めたことを宣言をしたにもかかわらず、それを覆すと「有言不実行な人」と思われてしまうと感じます。ほとんどの人はそう思われることを好まないため、最後まで宣言内容を遂行しようします。

コミットメントと一貫性の活用方法「小さなお願いの後に大きなお願いをする」

この性質の活用方法として、フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)があります。これは、小さなお願いの後に大きなお願いをする方法です。例えばいきなり「この商品を買ってください」というのではなく、「話だけでも聞いていただけませんか?」というところからスタートします。そこから「試しに使ってみる」といった段階を経て購入へとつなげます。

惑わされないためのポイント「一旦立ち止まって考える」

この性質に惑わされないためには、人間は本来「コミットメントと一貫性」の性質があると気づくことが重要です。「この商品・サービスは本当に自分にとって必要なのか?」「小さなお願いから大きなお願いへすり替わっていないか?」を一度立ち止まって考えるだけで、不必要なものを購入せずに済みます。

社会的証明「みんながやってるから正しい」

人間は集団によって生活をしている社会的な生き物です。そのため「みんながやっているのだから正しいことだ」と思ってしまう性質があります。これが「社会的証明」です。多くの人がやっている行動や欲しがっている・持っている商品・サービスは何かしらの価値があるのではないかと考えてしまいます。

社会的証明の活用方法「導入実績No.1」

この法則は、多くの場面で利用されています。例えばテレビのバラエティ番組では、観客やスタッフの笑い声が必ずと言っていいほど聞こえます。これは「みんなが笑っているのだから面白いに違いない」と思わせる社会的証明の性質を利用しています。

製品やサービスのCMやWebサイトでは、「実際に使った人の声」や「口コミ」が多く使われています。これも「多くの人が使っているのだから良い商品なのだろう」と思わせる手法です。この法則は、類似性が高いほど効果が高いため、主婦に商品・サービスを販売したい場合、主婦の口コミを集めたほうが、高い効果を得られます。

惑わされないためのポイント「”みんな”ではなく”自分”はどうなのかを考える」

この性質に惑わされないようにするには、自分が行おうとしている行動や言動が、本当に自分の意見なのかを考えることが重要です。「ほしい!」「いいなぁ」と思った理由を一度立ち止まって考えてみましょう。意外と「みんながいいと言っていたから」という理由であることも往々にしてあります。

好意「好きな人に同意したくなる」

人は、自分が好意を抱く人物に同意したり、頼まれごとを断りづらい性質を持っています。まったく知らない人からおすすめされるよりも、友人や好きな芸能人がおすすめする商品を買いたくなる、またはかってしまったという経験は誰しもあるかと思います。

実際は、特定の人物に抱いている印象と、その人物がおすすめする商品・サービスはまったくの別物です。しかし人間には、その2つを結びつけてしまう傾向があります。

好意の活用方法「ハロー効果と類似性」

ハロー効果とは、一つの魅力的な特徴を持っていると他の部分も総じて優れて見える効果のこと。実際に、イケメンや美女は、そうでない人に比べて裁判で有利になったり面接で採用されやすかったりすることが多くの研究で明らかになっています。

「それではイケメンや美女でなければダメじゃないか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。顔が整っている点が影響を与えるのはもちろんですが、外見以外でも一つの能力が高いことが影響して他の部分もできるというイメージを与えることができます。例えば、入社した新人が英語が話せると「あの人は仕事ができる」と言われることがあげられます。(実際には英語ができるからと言って仕事ができるとは限りません)

そのため自分の最も優れている部分を最初に見せることで、他の部分も優れていると思わせることができます。他の人からよく褒められる部分や自分の特技などを見せることで、ハロー効果につなげましょう。

惑わされないポイント「意図的な好意がないか考えてみる」

実際にその人物に対して、本当に好意を抱いている場合は良いですが相手があなたに商品・サービスを買わせるために、「不当な好意」を生み出している場合は注意しなければいけません。

この不当な好意の見極め方は「短時間で異常なほど相手のことを好きになっていないか」です。もし当てはまる場合は、その人物と商品・サービスを切り分けて考えてみましょう。

人が他人に好意を抱く理由として

  • 類似性が高い
  • 接触回数が多い
  • 協同(一緒に何かを達成した)経験がある

があります。自分が買おうとしている商品・サービスを勧めてくれている人に上記の条件が当てはまらないかを確認してみましょう。

権威「あんなに偉い人が言ってるから」

「〇〇大学教授おすすめ!」「△△病院医院長推薦!」このような謳い文句の商品・サービス、たくさんありますよね。この文言が多い理由は、「権威」の性質があるからです。つまり、人間は権威を感じるものは、無意識に信頼してしまう生き物なのです。

有名な心理学の実験で、「ミルグラムの実験」があります。

この実験は被験者を「教師」と「学習者」にわけ、「教師」が出す問題に「学習者」が答えられなければ、「教師」が「学習者」に電気ショックが与えるというもの。間違えれば間違えるほど、電気ショックの強さは増していきます。

はじめは順調に答えていた「学習者」ですが、途中から間違いが発生し、どんどん電気ショックも強くなっていきます。「学習者」はとうとう「痛い!もう耐えられない!」という声をあげますが、研究者は「教師」に実験を続行するように言います。「教師」はそれに従いさらに強い電気ショックを与えます。

「学習者」はとうとう声を出すこともできない状況に陥り、当然問題にも回答できませんが、間違っていることには変わりないため、研究者は「教師」に電気ショックを「学習者」に与えるよう指示します。「教師」はそれに従い「学習者」に電気ショックを与えます。

最終的に電気ショックの最高値である450ボルトまで、「教師」は「学習者」に電気ショックを与え続けました。

この実験、実は「学習者」はサクラで、「教師」役の被験者が何の罪もない人に対して、何ボルトの電気ショックを与えるかを解明するものでした。事前の予測では、450ボルトまでいくと予測した研究者は1~2%したが、実際には約3分の2の被験者が450ボルトの電気ショックを与えたそうです。

興味深いことに、電気ショックを受け続けた「学習者」が「体の様子がおかしい、もうやめてくれ」と言っても研究者が実験を続けるよう指示すれば、「教師」は電気ショックを与えました。しかし反対に、「学習者」が「まだ大丈夫、もう少し実験を続けてくれ」と言っても研究者が実験をやめるように指示すれば、「教師」は電気ショックを与えるのをやめたそうです。

この実験結果からわかるように、私たちは権威のある人物・組織に対して逆らえない、無条件に信頼してしまうという性質を持っています。

権威の活用方法

権威の性質を活用する場合、何でも権威を振りかざせば良いというわけではありません。重要なのは、相手の信頼する権威を利用することです。相手がどのような人物を信頼するのかを把握すれば、この権威の性質をマーケティングに活用することができます。

惑わされないポイント

この性質に惑わされないポイントは、相手の言う権威は本物か考えてみることです。例えば「モデルの〇〇がおすすめするダイエット薬!」という文言があった際に「そのモデルは栄養学や薬学に精通しているのか?」と考えることが重要です。同じように「〇〇大学教授が~」「〇〇病院が~」というのもその大学や病院は果たしてその道を専門に研究しているのか、などの視点から考えましょう。

希少性「限定10個のみ!今しか手に入らない!!」

最後の性質は、希少性。「100個限定!」「◯月△日までの期間限定価格!」こういった広告を見たことがある方は多いかと思います。人間は限られたものほど、欲しくなる性質があります。

これは、心理的リアクタンスが働くからと言われています。これは自由を奪われることを回避しようとする行動のこと。数や期間が限定されることで、自由が限定されることに抵抗を覚え、欲しくなってしまうのです。

希少性の活用方法

希少性の活用方法は、商品やサービスが手に入りづらさを演出することです。商品・サービスの特徴だけでなく提供方法を少し工夫し、行動しなかった際に「損する」ことを想起させることで、購買へと結びつけることができると著者は述べています。

惑わされないポイント

希少性の性質に惑わされないポイントは、「一旦立ち止まってよく考えること」です。限定と言われると「今すぐに買わないと!」と考え焦ってしまいがちですが、本当にその商品・サービスが自分に必要化じっくり考えてみましょう。

影響力の武器を活かそう

『影響力の武器』について解説しました。人間がいかに自動的にものごとを考えているかがおわかりいただけたかと思います。そのため普段から「考えるクセ」を身につけていないと、たくさんの宣伝文句やマーケティングに踊らされてしまいます。当然自分が本当に求めるものや必要なものであればよいですが、そうでないもののほうが世の中には多くあります。

反対に自分が何を売り込む側の場合は、影響力の武器を使って、相手へ自分の商品・サービスを売り込みましょう。少しの工夫で、売れ行きがグンと変わることが実感できると思います。

この本が気になった方はぜひ、書籍も読んでみてください。ここでは紹介しきれなかった興味深い事例や研究が多数紹介されています。

コメント

  1. MAYA より:

    影響力の武器、気になりつつも読むにはハードル(本の厚み)が高くて手を出しあぐねていました。
    サクッと読めてわかりやすかったですし、まさにこの影響力に惑わされて購入してしまったものの心当たりもいくつもあって、「あっっ……」となりました。
    また読み返して自分でも活用したいエントリでした。
    はてブもしました!
    役に立つブログをありがとうございました。

    • RumiRumi より:

      MAYAさん
      コメントありがとうございます!確かに分厚いのでなかなか手が出しづらいですよね……
      私も買ってしばらく積ん読してました^^;
      この本を読むと「ああっあのときの……!」って過去の経験を思い出すのが面白いですよね
      普段の無意識を不意打ちされると思わず買ってしまうので私も改めて意識し直したいなと思いました!
      こちらこそ読んでいただきありがとうございます!