全国の書店員が今売りたい本を決める賞として、年々注目を集めている本屋大賞。今回は全17作品の受賞作の中からおすすめの10作をご紹介します。
本屋大賞とは
本屋大賞とは、「書店員が本当に売りたい書籍」として、書店員の投票によって受賞作が決まります。2004年から開催し2021年で18回目を向かえます。
2018年からはノンフィクション大賞も
2018年からはYahoo!と協力した「ノンフィクション大賞」も開始されました。ノンフィクション大賞の過去の受賞作はこちら。
2018年:『極夜行』角幡唯介
2019年:『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ
2020年:『エンド・オブ・ライフ』 佐々涼子
本屋大賞の傾向
本屋大賞の傾向はエンタメ系文芸の傾向が強いです。難解な純文学と言うよりも「わかりやすい+共感しやすい(感情が動かされる)」作品が顕著に多いイメージです。そのため小説を普段読まない方でも手に取りやすいのが特徴です。
歴代の本屋大賞を受賞した作品一覧
- 2004年『博士の愛した数式』小川洋子
- 2005年『夜のピクニック』恩田陸
- 2006年『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー
- 2007年『一瞬の風になれ』佐藤多佳子
- 2008年『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎
- 2009年『告白』湊かなえ
- 2010年『天地明察』冲方丁
- 2011年『謎解きはディナーの後で』東川篤哉
- 2012年『舟を編む』三浦しをん
- 2013年『海賊と呼ばれた男』百田尚樹
- 2014年『村上海賊の娘』和田竜
- 2015年『鹿の王』上橋菜穂子
- 2016年『羊と鋼の森』宮下奈都
- 2017年『蜜蜂と遠雷』恩田陸
- 2018年『かがみの孤城』辻村深月
- 2019年『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
- 2020年『流浪の月』凪良ゆう
2021年本屋大賞ノミネート作品一覧
2021年の本屋大賞には、次の10作品がノミネートされています。大賞発表は2021年4月14日です。楽しみですね!
・伊吹有喜『犬がいた季節』(双葉社)
・青山美智子『お探し物は図書室まで』(ポプラ社)
・宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)
・加藤シゲアキ『オルタネート』(新潮社)
・伊坂幸太郎『逆ソクラテス』(集英社)
・町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』(中央公論新社)
・深緑野分『この本を盗む者は』(KADOKAWA)
・山本文緒『自転しながら公転する』(新潮社)
・伊与原新『八月の銀の雪』(新潮社)
・凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』(中央公論新社)
本屋大賞作品をタダで読む方法はこちら
本屋大賞受賞作おすすめ10作品
本屋大賞の過去の受賞作のなかでとくにおすすめの10作品をピックアップしてみました。どれから読めばよいのかわからない!という方は参考にしてみてください
『船を編む』三浦しをん
辞書の編集部という普段なかなか目にすることができない仕事場を舞台にした小説。
「右」はどのように説明するか?という簡単そうだけど、とてもむずかしい辞書づくりの一面を垣間見ることができます。
何よりも登場するキャラクターたちがみんな個性あふれる魅力的なキャラクターばかり!本を読むことが好きだけど、人との付き合いはからきし苦手の主人公馬締光也(マジメミツヤ)。そんな馬締が惹かれた板前を目指すの林香具矢(ハヤシカグヤ)、辞書づくりのチームメイトでお調子者の西岡 正志(ニシオカマサシ)など各キャラクターの想いにも、ぐっと心を掴まれます。
『羊と鋼の森』宮下奈都
ピアノの調律師見習いの主人公、外村(トムラ)の成長を描いた作品。タイトルの「羊」と「鋼」はピアノのハンマーとなる羊の毛と、ピアノの弦となる鋼からきています。
ピアノの調律は「これが正解です」という答えがないもの。正解がないなかで、自分の才能や技術に疑問を持ちながらも前へと進み続ける外村の姿は、ゴールがわからないながらも前に進むしかない私たちの人生を反映しているようで、勇気づけられます。
『博士の愛した数式』小川洋子
交通事故により記憶が80分しか持たない数学専門の学者である「博士」と家政婦である主人公「私」、私の息子である「ルート」との交流を描いた作品。
数学を心から愛する博士と私、ルートがさまざまなトラブルを乗り越える様子がやさしい筆致で描かれています。日常にあふれる数字や数学の魅力に気付けるようになるでしょう。
『かがみの孤城』辻村深月
中学校に通えない安西こころの部屋の鏡がある日突然、輝き出す。不思議に思いながらそこに足を踏み入れると、自分を含めた7人の子どもたちが集められていて……というお話。
『かがみの孤城』は当初『かがみの城』というタイトルでしたが、編集者からの助言により「敵から囲まれて身動きがとれない城」をあらわす「孤城」に変更されたそうです。
その意味の通り、かがみのなかの城に集められたのは学校に通えず、自らの居場所を失っている子どもたち。彼らの交流やトラブルを乗り越えていく姿はおもわず応援したくなります。「学校が辛い」と感じている学生の方はもちろん、「自分の居場所」がわからなくなっている大人の方にもおすすめです。
『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー
現在俳優として活躍しているリリー・フランキーの私小説。自らの半生と育ててくれたオカン、そして気まぐれにふらりと現れるオトンとの交流を描いています。「おふくろのことを書きたいと思って書いた小説」と著者が言うように、全編を通じてオカンへの愛が溢れています。
幼少期から少年期のやんちゃっぷりに笑い、東京でのオカンとの生活にほっこりし、ラストは号泣という感情ジェットコースターを味わえます。
『ゴールデンスランバー』伊坂幸太郎
文学・エンタテインメント性を兼ね備えた小説といえばこの一冊言いたくなる作品。突如、首相暗殺犯に仕立て上げられた主人公がひたすら逃げる様子が描かれています。一般的な話の流れでは、真犯人を突き止め捕まえる!となりますが、そうはいかないのがこの作品のおもしろいところ。
エンタテインメント作品としての面白さはもちろん、大衆心理や全貌が見えない巨大な”力”の恐ろしさも描かれています。
『蜜蜂と遠雷』恩田陸
4人の若き天才ピアニストが挑むコンクールの模様を描いた作品。コンクールの予選から本選までを描いています。一見、冗長になりそうに感じますが、そこを面白く描くところが恩田陸のすごさといったところ。
コンクールに抱く各々の想いや様子はもちろん、文章なのに音楽が聞こえてくるその描写の素晴らしさが見どころです。
『告白』湊かなえ
湊かなえのデビュー作。松たか子主演映画で話題になりました。シングルマザーの森口悠子(モリグチユウコ)のある「告白」によって物語は始まります。
閉鎖的なクラスでの人間関係、残酷で無邪気な子どもたち、そして森口による”究極の復讐”。「イヤミスの女王」湊かなえの原点がここに詰まっています。
『夜のピクニック』恩田陸
全校生徒が24時間かけて80kmを歩く伝統行事「歩行祭」。主人公の甲田貴子(コウダタカコ)は、ある思いを胸に、高校生最後の歩行祭に臨みます。
毎日当たり前のようにしている「歩く」という行為が、友だちと夜歩くことによって、各人のさまざまな想いが交錯していくところが魅力です。誰かとゆっくり話しをしたくなる作品です。
『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ
父親が3人、母親が2人いる、主人公・森宮優子(モリミヤユウコ)。水戸、田中、泉ヶ原、そして今は森宮。親がたくさんいてリレーをされているというと、暗い話なのかと思いきや心がどこまでも温かくなる作品です。家族とは、血の繋がりとは、人との絆とは、そんなことを考えたくなります。
本屋大賞の作品は読書初心者から熟練者まで幅広くおすすめ
ここで紹介したおすすめ作品以外にも、たくさんのおすすめ作品が本屋大賞にはあります。小説を普段は読まないという方でも読みやすい作品が多く、個性豊かな作品が数多くあるため、自分好みの作品を探してみるのもおすすめです。
興味のある作品はぜひ手にとって見てみてください!
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